素因減額

素因減額とは、交通事故による損害の発生や拡大について被害者自身の素因(要因)が影響している場合に、程度に応じて賠償金を減額することをいう。過失相殺のように、当事者間での損害の公平な分担の見地から、被害者の事情を斟酌して損害賠償額を減額させる考えである。不法行為の成立や損害の発生・拡大について被害者の素因が寄与や競合している場合、その被害者の素因を斟酌して損害賠償額を減額するということである。

素因には、被害者の既往の疾患や身体的特徴などの体質的素因と、精神的傾向である心因的素因がある。

心因的要因とは、被害者の心理的・精神的・性格的な問題であり、被害者の特異な性格、回復への自発的な意欲の欠如、うつ病の既往症や賠償性神経症などがあげられる。交通事故の被害に遭ったことをきっかけに心理的な反応が起こることは誰にもありうるが、通常の場合に予想されるレベルを超えているため損害が拡大したといえる場合、心因的素因による素因減額がなされる。

体質的要因による素因減額では、過去の判例では、損害の発生や拡大に寄与した体質的要因が疾患にあたるケースでは認められやすいが、体質的要因が疾患に至らない身体的特徴にとどまるケースでは、原則的に素因減額は認められない傾向がある。